かな書
万葉集より
【読み】
降る雪を腰になづみて参(ま)ゐ出来(でこ)し験(しるし)もあるか年の初めに
【意味】
降り積もった雪に腰までつかりなかなか前に進めなかった、そのような状況で参上したのだから、何か良い事があるでしょう、年の初めに
【解説】
今回、万葉集の選者の一人である大伴家持の和歌を取り上げます。
万葉集約4500首のうち、家持の歌は474首もあり、なかでも越の国府(現富山県高岡市)赴任中5年間で220首もの名歌を残している。取り上げた歌は、奈良の都の淡雪しか経験のない家持が、日本海の冬の豪雪をまじかに見、さしもの名人もどう表現しようか悩んだ末「腰になづみて」と「なづむ=進めずに苦しむ」腰まで雪につかりなかなか前に進めないと表現した。
豪雪を毎日眺め、家持もしばらく、歌を詠う心境になれなかったのでは。
随筆 ペン書
徒然草 第十三段
【作品】
ひとり灯(ともしび)のもとに、文(ふみ)をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなうなぐさぬわざなる。
(三木紀人著 徒然草全訳注)
【意味】
ひとり、灯下に書物をひろげて、遠い時代の人を友とするのは、このうえない慰めである。
【解説】
還暦を過ぎた私が、「遠い時代の人を友とする」と読むと、何かしら作者(兼好)の孤独感が強く感じられる。この段では、次に良い書物として、文選や白楽天の詩、老子の言葉、荘子の本などをあげている。
徒然草を読むときの参考となりそうな本を紹介したのかもしれない。
漢字書
【作品】
鱈「たら」
【解説】
漢字は中国で誕生した。しかし中国にない漢字がある。これを「国字」という。つまり日本で作られた漢字である。代表的な国字として、“辻・峠・畑”などがあり、よくクイズなどの問題にもなることがある。
今回の作品「鱈(たら)」も国字で、冬の日本海を代表する魚である。
特に部首の魚部には「国字」が多いように思う。それは、日本は国全体が海に囲まれ、魚の種類も多くいる、また日本料理に必ず魚を材料とした献立を並べる、そこで献立表にしゃれた文字で魚の特徴を表す遊び心から生まれたと思われる。
色紙
【作品】
輝
【意味】
新しい年を迎えるに当たり、輝きを添えるという意味
【解説】
暗いニュースが多い中、新年は明るく迎えましょう。という思いで工夫をしていたところ、なんと北陸新幹線の車体名が「かがやき」と決まった。私は応募したわけではないが、何かひらめいていたのかもしれない。
条幅
【作品】
琴書常自楽
【読み】
きんしょ常に自ら楽しむ
【解説】
琴書とは、琴(音楽)と読書。風流人の高尚な趣味のことで、それを私は楽しんでいるという意味。
気ぜわしい世の中、雑音に邪魔されず、ゆったりと自分の好きなことに時間を過ごす、それが大事なことではないでしょうか
篆刻
第五回ギャラリーを書き終えて
昨年の11月に第一回を掲示してから、ついに一年が経過しました。
今年、溪風書道会北陸の仲間たちと11月9日・10日と金沢市民文化センターにおいて「書展」を開催、多くの方に観覧いただきうれしく思っています。
まだまだ書きたい作品が多くあります、どうぞ「雲心庵」で憩いを感じてください。ご来場をお待ちいたしております。
平成25年11月30日