かな書
万葉集より
【読み】
生けるひと遂にも死ぬるものにあればこの世なるまは楽しくをあらな
【意味】
人はいつか死ぬのだから、この世に生きている時は楽しく暮らそうよ
【解説】
大伴旅人の和歌で、旅人は第五回に紹介した大伴家持の父である。
この和歌は、実にわかりやすい。こんな素直な歌が詠める万葉歌人に、私は親しみを覚える。
また、旅人はお酒がお好きな人で、酒の讃歌を数多く歌っています。
いずれまた登場して頂きましょう。
ペン書
【作品】
友とするにわろき者、七つあり。一つには、高くやんごとなき人。二つには若き人。三つには病なく身強き人。四つには酒を好む人。五つにはたけく勇める兵。六つには虚言する人。七つには欲深き人。
[百十七段]
(三木紀人著 徒然草全訳注)
【意味】
友とするのに不適当な者が七つある。一に高貴な人。二に若い人。三に無病で健康な人。四に酒好きな人。五に勇敢な武士。六に嘘をつく人。七に欲の深い人。
【解説】
なぜ若い人や勇敢な人がわろき者なのか、この段だけではわかりずらいが、第137段や第172段には、弱くはかないものへの感性に鈍感な人と述べている。 「無常」を自覚できない人は、ようするに友としたくないと。
ちなみに「無常:仏語 一切の物は消滅・変化して常住でないこと。」(広辞苑より)
漢字書
【作品】
松竹故年心
【読み】
まつたけこねんのこころ
【解説】
意味は、世の中の変動をよそに変わらぬ心を持ち続ける。
私の所属する溪風書道会の毎月提出する行書の課題です。
いきなり作品は書けません。毎日の基礎練習が大切なのです。
色紙
【作品】
守破離
【意味】
しゅはり
【解説】
学ぶ姿勢として「守」は師の教えを忠実に守り、確実に身につける。
「破」師の教えに自分で考え良いものを取り入れ、心技を発展させる
「離」師から離れ、独自の新しいものを生み出し、自分を確立させる
「goo国語辞典より」
篆書で書きたいと思い、試行錯誤しましたが、色紙なので篆書風にしてみました。色紙は何回も書くものではない、一回で書き上げるものだと先生から教えられています。まだまだ(守)破離になっていませんが。
条幅
【作品】
今日乞食逢驟雨暫時避古祠中可咲一囊與一鉢生涯蕭灑破家風
【読み】
今日食乞ひつつ 驟雨に逢ひ。暫時廻避す 古祠の中。わらふべし一囊と一鉢と。生涯蕭灑(しようさい)たり破家(はか)の風。
【意味】
托鉢に出かけて雨にあい、暫く古びた祠堂に晴れ間を待った。何気なく自分の風体をうちながめる。笑ってしまった 一囊と一鉢しか持ってない自分がいた、でも、出家のわが身は生涯さっぱりしたものだ。
【解説】
ここまで達観すれば、すごいの一言。近年良寛に関心をもつ若い人が多いと聞いていますが、悩み多き時代に何か良寛さんの生き方に共感するところがあるのかもしれません。
篆刻
第九回ギャラリーを書き終えて
条幅作品の課題を良寛さんの漢詩「避雨」とした。ところが、詩集によって微妙に文字の違いがみられ、図書館に出向き調べてみました。
ポイントは“可咲”がほとんどの詩集が“可笑”となっている。また“一嚢”が“一瓶”と記載している詩集が多い点で、どれが正しいのか判断がつかなかったからです。
定本 良寛詩集譯(著者 飯田利行)という本で「咲に笑とあるのが目立つが、咲の方が雅趣があって面白い。囊は、自筆稿すべて同じ。しかるに諸本の大部分は、瓶とある。」という記述に出会い、本編の作品となりました。
それにしても、詩集によっていろいろな解釈があるとは、不思議感が否めません。
平成26年11月30日